うたかたの

よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

この限りではない

好きって気持ちは厄介だ。

ある日突然心の中に土足でずかずか入ってきて、戸惑うこちらを押しのけて我が物顔で居座ったり。なかなか出て行ってくれないくせに、前触れもなくぽっかりと穴だけ残して消えちゃったり。その上、それまで苦手としていたアレコレに容易く例外を作っちゃったりなんかするのだから。ほんと扱いにくくて困ってしまう。

 

そもそもわたしは優しい人が苦手だ。いきなり何の話だと思うかもだが、順を追って説明する(多分できるはずだ)から、とりあえず聞いてくれ。

誰かの優しさに触れる度、それがどんなに微笑ましい光景であっても、わたし自身が嬉しかったり感謝したりしたとしても、ついつい頭の片隅を過ってしまう。「胡散臭い」の一言が。これはもう条件反射みたいなもので、残念ながらやめられないし止まらない。わたしが自他ともに認める非常にひねくれた人間である、というのがその理由の一つになるのかどうかはわからないけど、どうやらわたしには「優しい」を「怪しい」に自動変換してしまう機能が標準装備されてるらしい。「人を見たら泥棒と思え」じゃないが、「優しい人を見たらその優しさの裏側にある真意を見抜け」と、不要な上に一方通行で不毛な心理戦を無駄に繰り広げてしまうのだ。本人からすると生きづらいったらないんだけれど、この機能は24時間年中無休で提供されちゃう仕組みなので諦めるほかない。そりゃあね、わたしだってわかってはいる。それなりに短くはない年数を生きてきて、一応理解はしているつもりである。この世の中には「息をするように優しさを差し出す人間が存在する」ということを。実際、こちらが心配になるくらい誰に対しても優しいという人がいたりする。わたしからすると、いやなんで?と疑問ばかりが先行して、その優しさを額面通りに受け取ることが難しい。ない腹をどうしたって探ってしまう。何か目的があっての優しさだったら、素直に認めることができるのに。その優しさの裏が見えないと途端に不安になってしまうのだ。

長くなってしまったが、つまりはこうだ。わたしは優しい人に対して自然と苦手意識を持ってしまう人間なのである。(一言で済ませられるのにいちいち説明が長ったらしくてごめんなさい。)

そんなわたしはスノメンバーのとある方に対して一方的に苦手意識を持っていた。ジャニーズ随一のあざとさを誇ると噂の阿部亮平(敬称略)、その人に。

阿部亮平という人を一言で表すとしたら?その答えは様々だろうけど、「優しい」だったり「賢い」だったり「あざと(かわい)い」なんかが恐らく上位にくるのだろう。ご多分に漏れず、わたしもきっとこう答える。彼を一言で言うならば「優しい」かなと。

だから、だ。優しさが透けて見えちゃってるから。目を逸らせないくらいど真ん中に「主成分:優しさ」とでっかく表示されてしまっているから。だから、わたしは阿部亮平が苦手だった。優しいがあふれ出てる様が否応なしに絶えずわたしの苦手を刺激する。阿部担を一網打尽にするであろうその優しさ溢れる笑みなんか、わたしなんぞが直視するには眩しすぎる。自分の差し出す優しさがいつも理由ありきであることが必要以上に後ろめたくも感じてしまう。いやそんなこと思う必要なんか全然ないし、もう完全に自分の問題であるのだけれど。ただここで誤解してほしくないのは、嫌いとかそういった類の話じゃまったくないということだ。例えるなら、「ピーマンは苦手だけど大好きなチンジャオロースに入ってれば食べられる、というかチンジャオロースのピーマンは苦手というよりむしろ好き」みたいなことなのだ。…いやこの例えが合ってるのか、ましてやこれでわたしの気持ちがほんの少しでも伝わるのかもわかんないけど。(余談だが、わたしはピーマンが苦手ではなくむしろ好きだし、チンジャオロースへの好きレベルは中程度である。)

 

阿部亮平は苦手だけどSnow Manの中にいる阿部ちゃんは好き。Snow Manというごった煮(←褒めてる)の中で優しさっていうスパイスになってる阿部ちゃんが好き。そんな認識で過ごしていたわたしにある日転機が訪れる。これだ。

 

www.youtube.com

 

動画が終わるころにはもう阿部ちゃんを好きになってる自分がいた。阿部ちゃん単体で好きになってた。Snow Manなんて枠ありきで阿部ちゃんを見ていたわたしはもうそこにはいなかった。いやなんで?どこで?どうして?この動画の阿部ちゃんになぜそこまで惹きつけられてしまったのか、わたし自身もまったくわからないまま、今日に至る。

直視できなかったはずの優しい笑みからはもう目をそらすことの方が難しく、その声音に至っては耳を塞ぐことなど出来るはずもない。そもそも、阿部ちゃんにはわたしが好きになる要素があり過ぎる。そう、あり過ぎるのだ。(大事なことなので2回言う。本当はもっと言いたいけれどしつこいかもだから我慢する。)正直に言おう。スノが箱ごと大好きで序列をつけるなんておこがましいにも程があり避けて通りたいのは山々であるけれども、それは一旦置いといて敢えて言う。敢えて好きなタイプとして(←ここ重要)メンバーを挙げるとするならば、わたしがメンバーの中で最も好きなタイプ、それは阿部ちゃんだ。さっきまで「優しい人は苦手」とか嘯いていたのは誰だ?…わたしだ。それは紛れもなくわたしです土下座しますゴメンナサイ。訳も分からず阿部ちゃん限定で優しさへの苦手意識が解けた途端にこのざまだ。なんてことだ。要所要所で的確にわたしのツボをついてくる阿部ちゃん、やはりあなたは仕事ができる。そんなところももれなく好きだ。大好きだ。どこらへんがタイプでどんな風に好きかなんて具体的で細かい話は長くなる上にここまで書いておいて今さらだけど非常に恥ずかしいので割愛させていただくが、ふたを開けてみればこの体たらく。なんてざま。

…いやほんと何コレ、なんなんだもう!わたしは今怒っている。ちょっとだけだけど、怒ってますよ?なんで怒ってるかわかります?あ、これ嫌な詰められ方だったりするかしら?いやそんなんもうどうだっていいんだ、だってこっちは怒ってるんだ!なんていうかさあ、Snow Man全員にもれなく言えることなんだけど、こちらが油断してる隙を見計らってだか何だか知らないけど、断りもなく心に土足で入ってくるのとかそういうの?アイドルだからって許されるとか思うなよ?せめて「お邪魔します」とか一言挨拶あってもよくない?とかわたしは思ってしまうわけ。そういう礼節っていうか礼儀っていうか、そういった類のことが気になってしまう性分なのよ。だからせめて挨拶なしで来るのであれば、例えばそう、遠慮がちに入って来るとか態度で示すとかできるでしょ?こっちだって心の準備とか諸々のお迎え態勢が整ってないと困るわけ。何事も受け入れ準備は必要だし、今後に備えてお金なんかも必要だったりするでしょう?あなた方を見ていると、次から次へと現れる刺客がちょっと多すぎる!できれば極力パワー抑え気味でお願いしたいし、お一人様ずつゆっくりと様子見て入ってきてもらうこととかできたりしません?9人全員迎えるにはわたしの心は狭すぎるのでね?いや入室を許してしまったわたしの責任ってのもわかるけども。だけどなんか納得いかない。なんか納得いかないんだよなあ。…いやなんだこれ。なんだほんと。結局わたしは何を言いたいのか、それすらわかんなくなってきたじゃないか。あーやだやだ、好きってほんと厄介だ。

 

ともかく、この日を境に、わたしの中にある一文が書き加えられた。

わたしは優しい人が苦手だ。ただし、阿部亮平についてはこの限りでない。

 

本日円盤フラゲ日と明日の佐久間さんお誕生日を寿ぎ、しばらくは阿部ちゃんに観念して過ごすこととします。